昔の伊勢講の様子

お伊勢詣りの代参が記録として残っているのは、明治八年からである。(九号組参宮順番記)八、九、十と三つの講が、それぞれ代参を立てた。村は組に一人づつ、十人が揃って代参する習わしが今も続いている。昭和十六年、班の編成替えで十人が七人となった。

川東は、毎年二月一日の神明講に、宿と共に代参者を抽選で決める。センターが出来てから七班は宿はセンターを使用している。(参宮宿順番記)代参者が村に帰ってくるのは、講を行う三月十九日と決まっていた。交通機関の発達していない頃の参拝には、少なくとも十日から一週間はかかったもである。通常は徒歩で養老町、舟付から河を下って桑名から海路、山田に到着する。

内宮、外宮の両宮に参拝し、お神楽を奉納してお札を受ける。お札は神明社に納めるもの一体、各組必要なお札を受ける。川東では講宿に納めるお札とお供へとを受けてくる。参拝が終わると、古市の旅館、麻吉に投宿する。交通機関の発達に伴い、参拝の日時は順次短縮されていったが、宿は麻吉以外にはと

らなかった。所々見物して帰路に付き、十八日の夕方に高田の永楽屋旅館に入る。(この旅館は戦後無くなった)十九日に徒歩で和田に達した一行は、ここから御幣を先頭に、伊勢音頭で長彦神社に参拝して、受けてきた御札を神明社に納めた。

始めて代参で参拝した家には、宮守りが家の戸口に締め縄をはり、代参から帰る日に取り除いた。そして初参りの家では親戚をお祝いに招待したものである。

当日は、代参を向かえる為、講員は宿に集まる。前もって餅米を一升づつ供出し、餅つきを行うのである。餅は「てのこぼ」と言うあんころになる。大体一戸に三個づつ作るが、その中でもお取りはちと云うのは一個で重箱一杯となる。なんといっても、餅付きの楽しみは、約二臼(ふたうす)を特によくつき、砂糖を通常より一割も多くしたあんころをその場で食べるあの味であろう。指の間からしたたる餅を、すするようにして食べる餅の味は、経験した者のみが知る昧であろう。

餅ができあがり、代参を向かえる準備が完了した午後六時になると、代参は宿に到着する、講宿では、床正面に天照皇大神を祭る(代参の受けてきた大麻)。神酒を供える、祝い膳にはどの碗にも餅が入っている。代参に挨拶がされる。講宿主人の案内で正面所定の席に坐る。代参は紋服、講宿主も準じた服装である。神酒をいただいて、当日用意された酒肴で、祝宴は始まる。

酒が回れば歌がでる。宴の半ば頃、お取りはちが配られる。大きいから持参の重箱で受ける。終わりに近づくと、伊勢音頭が歌いだされる。千秋楽の歌で祝宴は終わる。配られた餅は家族への御土産となる。この餅つきの行事は、昭和四十一年から六、七班共行われなくなり、長い伝統行事も消えた。其の後、暫く六班は講を中止していたが、昭和五十一年から簡素化して再び行われるようになった。代参には講から費用を補助する。今は美濃高田〜宇治山田間の電車賃往復の三倍を支給している。餅をついた頃は、各戸餅米一升、小豆一合をだす。砂糖(ザラメ)五キン、黒砂糖ニキンを使用、三升臼で八回位はついたものだった。

代参で参詣した時の御土産は、大体決まっている。しゃもじ、はし、錦絵、笛、貝殻笛、たばこ入れ(榊原の名入りのもの)棒菓子、一せんまんじゅう、赤福等で有り、今も昔も変わりなく、懐かしいものである。

九号組参宮順番記によると、基金を作りそれにより毎年代参者に旅費や祈とう料を出している。参宮宿雑用割符帳により講の昔の様子を伺い知る事が出来る。

川東伊勢音頭(MP3形式、3分18秒、3,088Kbytes)
 (唄:三輪欽一氏&田中静雄氏  平成5年2月
録音)

川東伊勢音頭

各家持ち回りの伊勢代参は、順番が回ってくるのに、20年以上かかることもあります。
そこで、初めて代参を引き受けてまごつかないよう、いろいろな慣習を、先人の記憶を頼りに「手引き」としてまとめてみました。

伊勢代参の手引き

伊勢代参の手引き

 

 1.事前に確認しておくこと

 事前打ち合わせにより、以下のことを確認しておくことが必要でしょう。

@       代参者の氏名、ふりがな、電話番号

代参者全員に渡しておく。この名簿(ふりがな付)は、長彦神社の神主さんにも渡しておく。
もし、代参者に変更があれば、その変更も神主さんに伝えておく。(長彦神社への報告祈祷の際、
神主さんの詔(みことのり)にて代参者氏名が朗読されるため)

A       洗米、剣崎(スルメ)、昆布は誰が持っていくのか。

これは、伊勢講の際、全員に御下がりとして分配する班、しない班など、班によって方法が異なります
が、一応全7班分必要として誰かがまとめてもって行くほうが、よいのではないでしょうか。
洗米は2〜3合、剣崎は3〜4枚、昆布は小7切れ程度。

(洗米は、精米を水洗いして乾燥させたもの)

B       代参日の決定、車の手配

代参日は、伊勢講日(班によっては3月19日固定と春分の日休日とに分かれる)の前の
日曜日が普通。しかし、余裕をもって、もう1週前にすることもあります。
この際、洗米、剣崎、昆布は乾燥したところに保存し、伊勢講までカビの生えないようにします。

また、車は、事故など万が一のことを考慮すると運転士つきのレンタカーが望ましいでしょう。
運転士つきで、マイクロバス8人乗り1日約2万5000円〜3万円程度。

3万円なら燃料代は含まれることが多いのですが、高速道路料金は別。あとは、交渉次第でしょう。
運転士の昼食代、コーヒー代はこちらで持つのがよいでしょう。

(高速道路料金は、東名阪、伊勢道往復で5,200円)

C       代参時の服装

   特に決まりはありませんが、代表者は背広、その他は華美にならない服装であればよいのでは
   ないかという意見が多いようです。しかし、代表者の玉串奉奠(ほうてん)もないため、
   全員どんな服装でもよいのではないでしょうか。

   D       長彦神社の神主さんへの連絡

   代参の月日、代参者氏名(ふりがな付き)、戻る予定の 時刻、代参代表者の携帯番号を神主
   さんに連絡するとともに、当日の神主さんへの連絡方法(携帯番号)を聞いておくとよいでしょう。

 

 2.事前に用意し、持っていくもの

 @ 必須  伊勢代参台帳、洗米、剣崎、昆布

 A 推奨  和紙、小ビニール袋(洗米、剣崎、昆布を分けるとき使用)、輪ゴム、マジック
       (土産袋に名前を書く)、あとは道中の酒とつまみ、コーヒー等

 

 3.行程

@       出発時間は、出来るだけ早いほうがよい。できれば、7時30分までには出発すること。

A       経路 

   四日市インターから東名阪高速道路に入り、そのまま伊勢自動車道で、伊勢西インターへ。
   一之瀬から四日市インターまで約1時間。四日市インターからノンス  

   トップで伊勢西インターまで約1時間。(トイレ休憩は十分考慮しておく)
    伊勢西インターから内宮までは、車で5分の距離だが、これはあくまで渋滞していないときの
   時間であり、午前10時過ぎになると、内宮の駐車場に入りきれない車により渋滞がおこります。
   そうなると下宮から内宮まで1時間はかかる。伊勢西インターには9時30分までには着きたい。

 ところで、一之瀬伊勢講にはなぜか内宮→外宮の順序で参内する慣わしがあるそうです。
 伊勢神宮の公式ホームページには、『まず外宮からお参りしましょう』と書かれていますが…。

B       食事 

   内宮前のおはらい横丁で食事をとるか、鳥羽などへ出てもしくは帰路のレストランなどで食事を
   とるかで経路が大きく異なります。
(以下は、内宮 → 外宮の順序で参拝する場合の経路比較)

ア.内宮前で食事をとる場合

内宮参拝 → 外宮 → 内宮へ戻り食事 → 土産購買 → 帰路

この方法の場合、外宮参拝のあと内宮へ戻る際、時刻が11時過ぎになり、渋滞に巻き込まれる
恐れが高いです。したがって、あらかじめ食事所に予約を入れるとともに店の駐車場も依頼して確保
しておくことが必要でしょう。渋滞道路には警備員が居るので、
「○○屋さんへの予約客であり、
駐車場も確保してある」ことを告げれば、センターラインを走ることを許されます(ました)。

イ.その他で食事をとる場合

内宮参拝 → 土産購買 → 外宮 → 別所にて食事 → 帰路

この方法の場合、土産を十分選んだ後で食事をしなければならないため、食事時間が若干遅れる
ことも予想されますが、むしろ内宮に戻る時間が不要なこと、食事メニューが自由に選べることな
ど利点が多いでしょう。

 

  4.ご祈祷

@       内宮祈祷案内所にて申し込み用紙に記載して申し込みます。

一之瀬伊勢講と銘記し、代参者7名の氏名記載。代表者氏名は先頭に書きます。

名前には必ずふりがなを振ります。

一之瀬伊勢講台帳には、あらかじめ代参者の氏名を(班順に)記載しておきます。
 
A  祈祷料 15000円、神楽代3500円(500円×7人分)

B       伊勢講台帳に必ず領収印を押印してもらうこと。別途領収書ももらいます。

C       祈祷受付時間は、午前8時30分から午後4時まで。この間、人数がまとまり次第
     ご祈祷が始まります。

D       ご祈祷時間は約30分。代表者の玉串奉奠(たまぐしほうてん)はありません。
     撮影は禁止です。

E       祈祷前に、持参した洗米、剣先、昆布を自席の前に供えておきます。
    (一番前に円筒形の供物台があるので、この上に奉納しておくと良いのかも知れません。)

F       祈祷終了後、広間左にて、代表者から順に、お神酒を賜ります。その後、かわらけ
    (素焼きの盃)を1人1個いただきます。班によっては、伊勢講の際両側から盃を廻すため
     かわらけが2個必要なところもあります。この時、もう1個いただけないかお願いすれば
     いただけるかも知れません(未確認)が、だめなら、おかげ横丁(別紙絵地図参照)の
    「宮忠」で購入します。(1個130円(税別))

  

  5.土産の購買

@       ご祈祷案内所で、各班に1つずつ(計7個)紋菓子(大:1個300円(税込み)を買います。

A       あとは、各人の土産を購買。
   (あとで間違わないよう、袋にマジックで名前を記入
しておくと良いでしょう。)

 

  6.長彦神社への報告

@       あらかじめ長彦神社の神主さんに参内目途時刻(通常17時)を連絡しておき、 
      道路事情などで遅くなるときは、その旨連絡します。
   (神主さんの携帯番号を、あらかじめ聞いて
おくようにしましょう。)

A       長彦神社での神事は、約20分。1班から順に、全員玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います。

B       伊勢神宮での拝領品、洗米、剣先、昆布などはすべて奉納します。

C       その後、社務所にて、拝領品、洗米、剣先、昆布などを分けます。
      (のり、かつお節、盃などはくじ引きか。?)

D       伊勢講台帳は神主さんに預けます。 

伊勢講の慣習

 一之瀬地区では、「伊勢講」(伊勢代参)が、江戸時代
から今も続いています。

 一之瀬地区の7つの班から代表が1人づつ、毎年、3
月の上旬の日曜日、揃って伊勢神宮内宮・外宮に参拝
します。

 そして、3月19日またはその前後の休日に、班毎に
この代参者を迎えて、宴会を行います。
 礼服姿の代参者も、最初はかしこまっていますが、酒
が進むに連れ、飲めや歌えの無礼講・・・最後のしめくく
りの「伊勢音頭」が唄われるまで、宴会は続きます。

 昔は、この宴会場も、各家の持ち回り(お宿)でした
が、最近は、集会場が使われます。酒の量が、他の宴
会に比べて格段に多いので、宴会終了後、朝まで道で
酔いつぶれていた人がいたとか、エピソードにことかか
ない、伝統のある部落のコミュニケーションです。