何でも聞くところによると、このお地蔵さまは、そのむかし一之瀬村と和田村が山論(やまろん:村の山の境の争い)の時、主人の命令でお使いに行った女中が、何者かのためにこの場所で殺されたということです。そこで、一之瀬村の人々が、ふびんに思いお金を出し合って地蔵堂を建て、この女性の霊を慰めたのだといいます。
 ところが、最近、この地蔵堂は、長い年月の間に朽ち果てて雨もりするようになりました。これと同時に、だれいうとなく、こんな噂が広まりました。そこで、一之瀬の有志の人々が、新しく地蔵堂を修復してから、自然とこの噂は聞かれなくなりました。
 今では、新しい道になり、この旧道は、ほとんど人が通ることもなくなりました。

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 牧田の和田から、養老町の沢田へ通じる山沿いの道は、むかしから、しめんど(神明堂)と言って、寂しいところでし
たが、人々はよく往来しました。この道のわき少し入ったところに、お地蔵さまがひっそりと祀(まつ)られていますが、
気づく人があまりありません。

 さて、今から30年ほど前の夏のこと、人の噂には、この道を夜、白いツードアの車が通ると、白い服を着た女の人が
車を止め、「一之瀬まで乗せていって」とせがむというのです。
 そこで、呼び止められた人が車の中へ入れてやり、一之瀬へ着いたのでうしろの席を見たら、その女の人はいつのまに
か消えて、乗っていたところがビショビショに濡れていたといいます。乗せた人はビックリして血の気も失せ、その後数
日寝込んでしまったということです。この噂はたちまち村中に広まり、夜間はこの道を避け、牧田の上野の方へ廻る人も
ありました。

ものすごい美人の霊のものがたりです。
あなたも、このはなし、一度は聞いたことがあるでしょう。

川東 昔ばなし
落ち武者のたたり