田植えも無事にすんで、夏が近づくと、稲の大病である「いもち」にとりつかれるのが、毎年のようにつづきました。

 さて、むかし、一之瀬村に、大変嫁と姑の中の悪い家がありました。姑は、いつも口ぐせのように「うちの嫁も村の者
も、みんなおれをバカにする。おれが死んだら村中の田んぼに、いもちをつけてやる。」と言っていました。
このばあさんは、数年して死んだのですが、その年は、ばあさんが言っていたとおり、一之瀬では一面にいもち病が広が
りました。

 驚いた村人たちは、笹を持ち出して、みんなで田の面をなぜ歩きながら、「いーもちばーば送れ、いーもちばーば送れ」
と口々に叫び、いもち病をこの笹に移したといいます。
 それからこの笹を持って、殿垣外のはなせ谷の奥まで登り、今須村との村境まで行って、しんろくさんにのりとをあげて
もらい、境の向こうへ笹を放り投げて帰ってきたということです。

 一之瀬では、毎年これをくりかえしたので、いもち病もひどくならずにすんだと言われています。

嫁と姑(しゅうとめ)は、仲良くしなければいけない、
というお話です。

川東 昔ばなし
落ち武者のたたり