むかし、一之瀬の川東では、二ヶ所に山の神をまつっていました。

 おやま谷の山の神には、一丈六尺(4.8m)をまわる大杉があって、昼なお暗く、御神木としてしめ縄を張り、年に一度
9月12日におまつりをしていました。
 明治43年に切り倒して以来、おまつりはしていませんが、今でも、直径2m近くの切り株が残っており、ここを山の神さん
と呼んでいます。

 20年ほど前、川東では奥山に植林事業が始まり、再び山の神を奥山の山頂におまつりしようということになりました。川東
の祖先が、田んぼに用水(上畑田(うわはただ)用水)をひく大事業に成功してから、300年になるのを記念して、さこさ谷
の上流の雨乞岩にまつることになりました。大日照りの時に、前乞いをしたと言い伝えられる岩の上です。
 里から歩いて1時間半ほどかかり、ここも当時は薄暗く覆い繁っていたということですが、このあたりで仕事をしていた人は
みんな、天狗が木魚(もくぎょ)をたたく音を聞いたということです。中には、一度に数十本の材木を切り倒したような音を聞
いたという人もいます。

 祖先の苦労を偲んで、昭和57年9月26日、立派な笙嶽神社ができました。林道もできて、毎年6月の第一日曜日にみんな
でお参りしています。

川東の2つの山の神さんのいわれです。

川東 昔ばなし
落ち武者のたたり